私が休日に仕事をすることが多い喫茶店は、とある学習塾の大型校舎の近くなので授業帰りや試験帰りの親子連れが多く、保護者の方が勉強を見てあげている様子を本当に多く見かけます。
そこでいつも気になるのが、保護者の方がお子さんの取り組んだ教材を採点してあげた上で、間違っていた問題に関して「間違っているからもう一度よく考えて」と差し戻すというやりとりが非常に多いことです。
このような指示を受けると多くの子どもは、まちがえた理由がわからないままでまちがえた選択肢や手法を思考から外します。そしてなんとなく「別の方法」や「別の選択肢」を選ぶだけなのです。
そこでまた「ほら!違うでしょ!」というような「雑な」指摘を受けると「あ!そうか!」とテキトーな返事をしながら、またその選択肢を理由なく外します。そういうやりとりのなかで、訳がわからないままに「答え」に辿り着いてしまうのです。
「よく考えて」は曖昧な指示
「適切に考える」技術を身につけるために
親子間で「よく考える」ということがどのような作業を指しているのか共有できていれば別ですが、そのようなことは極めて稀でしょう。会社でも上司からのこのような指示でトラブルが起きたり、「何を言われているのかわからない」という不満がおきやすい「雑な」言葉遣いだと言えます。
話を戻して、国語の選択肢の問題を例に挙げてみましょう。
多くの選択肢は「一部は合っているが、一部が明らかに本文と異なる」という内容になっています。「よく考えていない」と感じられるお子さんは、「一部は合っている」という部分にのみ着目してしまい、選んでいます。その答えを「間違っている」と指摘されると、とりあえず他の選択肢の中から再び「一部だけは合っている」というものを選び出すだけなのです。
この場合の「よく考えて!」や「よく読んで!」は、「合っていると思う部分ではなく、他の部分が間違っているかどうかも検討して!」という意味です。
もちろん説明の際には「ここが違うでしょ!」という解説はされているのでしょうが、問題の指示が「適切なものを選べ」なので「適切」という言葉に引っ張られて、「不適切かどうか」という検討に至っていないのです。
このような状況では、「よく読んで!」といった掛け声や頭に残りにくい説明だけでは、「適切に考える」技術は身につきません。
問題の指示や復習のやり方として、「不適切な部分を見つけて、本文にその根拠を見つける」という「仕掛け」をする必要があります。
実際の試験問題にはそのようなものはありません。しかし、「きちんと考えられる」生徒は、回答の過程でこのような思考をしているわけです。「ある問題をできるようになるために、同じような問題をひたすら繰り返す」では、必要な技術は身につきにくいのです。
子どもたちが何も考えずに「なんとなく解きなおす」という「雑な作業」から抜け出すために、「問題への仕掛け」が必要なのです。
たとえば、学習塾ロジムの教室では
- 次の選択肢はすべて間違っているので、間違っていることがわかる箇所を本文に線を引け
というような問題を出題しています。
入試本番では出題されない形式ですが、「身につけて欲しい思考」を問題の中心に据えることで、「考える技術」が身に付く仕掛けです。これは、「正解を選ぶためには、間違っているところがないかきちんとチェックしましょう」という解説よりも何倍も効果的です。
是非ご家庭での声掛けにも活かしてみてください。