低学年では、「思い切り自由に遊ぶことで様々な力が育まれる」
という説が、なんとなく多くの同意を得ているものだと思います。
なぜなら、現在活躍されている方々の多くが、低学年の時に思い切り自由に遊んでいたからでしょう。
しかし実際には、「そもそもほとんどの子供が思い切り自由に遊んでいた」
というのが正しい状況認識だと思いますので、「思い切り自由に遊んだ」という環境から多くを身につけられる場合とそうでない場合があると考えるのが正しいと言えます。
例えば、滑り台を滑る際に身体で抵抗を感じて、摩擦の概念を学び取れる子もいれば、そうでない子もいます。
ゲームをやっていても、繰り返しの中で失敗した状況を分析して試行錯誤の質をあげていく力が身に付く子もいれば、同じ失敗をしただけで投げ出してしまう子もいます。
お子様の「公園での遊び」や「家庭での遊び」を観察されている中で、「遊びから学ぶ」力に大きな個人差があると感じていらっしゃる保護者の方もいるのではないでしょうか。
私は、大きく次の2つが必要だと思っています。
1:周りを観察する力
周りの人の成功と失敗を見て、自分の経験に付け加えていく力です。
2:自分が「感じていること」や「仕組み」を知る力
実際には見えないものを把握する力です。
「速さ」や「力」、「因果関係」を理解することで、「次を予測」していけるようになります。
人間関係において「相手の思考」を把握する力も含まれます。
この2つの力がないと「目の前のやることに場当たり的に取り組む」だけの遊びになってしまいます。
これは「自分が楽しい」という点では良い効果があるとは思いますが、「遊びから学べる」という点では不十分なのです。
過去の自身の経験を振り返ると、「同じ場所で同じことをしていた」はずなのに、私は何も考えずにやっていた一方で、友人が多くの情報や教訓を得て次のステップへと活かしていたことに驚いたことが多々あります。
冒頭の話に戻ると、この2つの能力が元々備わっていたり、身につけることに成功した人々が、
「遊びから学べることがとても重要だ」と振り返っているのです。
低学年においては何事においても「遊び」の要素によって集中力を高めてあげたり、没頭するきっかけを作ってあげることは有効です。
しかし、「遊んでいると多くを勝手に学んでいくものだ」というのはちょっと楽観的過ぎる見方でもあります。
私たちには「学べる遊び」をデザインしていくことが求められているのです。
1: 周りを観察したり、周りのやり方について詳しく考える機会を作る
2:抽象的な概念を理解できるような機会、仕組みを作る
ことを忘れてはいけません。「学び」と「遊び」をつなげる工夫が大事だと言えます。
これには、教材の工夫だけでなく、友人とのコミュニケーションを促す仕組みや、遊びを分析するようになる仕掛けが必要です。
このコラムでも、教室内外の良い取り組みを積極的に紹介していきたいと思います。