計算力は奥が深い

算数の学力の中で「計算力」と呼ばれるものがあります。
「計算はできるんだけど文章題は…」という嘆きの声は多く聞かれます。
3.14×24を正確に筆算できる
というのはもちろん「計算力」があるということですが、もう少し解像度を高めて考えてみましょう。

STEP1: 最低限必要となる暗算

まず「筆算のルールに従って正しくかつ迅速に作業できる」という最初の段階があります。
ここでポイントとなるのが「最低限必要となる暗算」です。

具体的には

1+1から9+9までの足し算
18−9から10―9までの引き算
掛け算九九

です。意外と盲点なのが2つ目の引き算です。

125―19をするときに、「一桁目は5−9ができないので10を借りてきて15−9をする」という手順を教わりますね。
この作業は15−9が暗算でできることを前提としています。この暗算が出来ないことで答えが違ったり、作業が止まってしまうことは少なくありません。この暗算がしっかり出来るかどうかの確認をしておくと良いでしょう。

この暗算は答えを覚えるだけでなく、具体的に碁石を並べてイメージするなどの工夫が必要になることがありますので、ご参考に。

12−5は
●●●●●●●●●●●● 12
から5つ取り除く
12を
●●●●●●●●●●|●●
と捉えて
まず2つ引く
そして残った10個からさらに3個引く

というイメージで作業する方が多いと思います。
実はここでも
全部で5つ取り除く まず→2つ、残り3つ
というように5を2と3に分ける暗算が要求されています。

ここでつまづいた場合は、「一桁の数字を分ける」という暗算の練習が必要になります。

STEP2: 四則演算を正しく選べる

足し算を習っているときは、足し算をすれば良い
引き算を習っているときは、大きな数字から小さな数字を引けば良い

というような感覚で作業していると、「計算手段を選択する」という視点が身についていないことがあります
引き算を教わった時点から、「今足すのか?引くのか?」「どの数字を使うのか?」を素早く判別する練習も取り入れておくことが大事です。

特に4年生になって答えが分数、小数になった時には「判別する力」を軽視していると文章題をほぼ間違えてしまうことになります。単元学習だけでなく、横断型の計算練習が重要になるタイミングです。

STEP3: 概算しながら、手順を追う力

長めの文章題では
(1)A君の速さを求めて、(2)B君の速さを求めて、(3)2人の間の距離を2人の速さの差で割る
というように

手順を考えること

計算をすること

を同時に行う必要が出てきます。

ここで
(1) A君の速さを求める
作業に思考が全て引っ張られてしまうと、「そもそも何を目指しているんだっけ?」となってしまい、全体の手順を定める作業が停滞してしまいます。完璧な答えを出さなくても良いので「概算」しながら、(1)→(2)→(3)の全体像は見失わないようにする計算力が必要になります。

ロジムの計算練習では、上のような文章題について口頭で

「A君の速さは40÷8で秒速5mで、B君の速さは60÷10で秒速6mで・・・」というような説明をする練習をします。
秒速の計算は最悪後回しでも構いません。
ここで40÷8を正確に筆算しようとして、全体から目を離してしまわないようにする練習なのです。高学年になるにつれて、「暗算しながら考える」ことが大切になってきます。

補足: 「概算」で桁数、偶奇などをチェックできる

細かい計算ミスは見直してもなかなか気づくことはできませんが、桁数や偶奇などの重要なポイントを素早くチェックする「概算力」も大切です。

15×155=22324

を見たときに
「明らかに桁数多い!」
「一の位4はあり得ない!」
と瞬時に気づく力です。これをもう一度計算し直すのではなく、

20×200でも4000なんだからおかしい
5×5なんだから4はおかしい

という概算を頭の中でできる計算力が大切です。
これができないと計算機を使っても、入力ミスに気づくことができません。

まとめ

このように「計算力」と言っても計算ドリルをこなせることだけを指す訳ではありません。
計算はそれ自体が目的なのではないのです。お子様のミスがどこに原因があるのかをもう少し細かく診断して、適切な練習を用意してあげることが必要なのです。