2014年上半期 入試で出そうなニュース・トピック

毎年1月~2月に実施される中学入試。作成されるのはその前年のGWから10月迄の間と言われています。今回は来年の冬の入試(平成26年度入試)の時事問題として取り上げられそうな、2014年上半期の重大ニュースを過去問題&想定問題とともにおさらいしてみます。

消費税増税(4月)

2014年4月、日本の消費税率が5%から8%にアップしました。社会福祉財源の充実と安定化が目的とされています。増加分を、年金・医療・介護・少子化対策等にあてようというわけです。1997年に消費税が3%から5%に引き上げられて以来の17年ぶりの増税です。消費税率は2015年にさらに10%にまで引き上げられる予定です。

【実際の入試では?】

問.次の(ア)~(エ)のうち、消費税のメリットとして正しいものはどれか。
(ア) 所得の少ない人は徴収される額が少ないため、弱者救済の面がある
(イ) 幅広い層から比較的公平に徴収することができる
(ウ) 高所得者から多額の税を徴収することができ、所得の再配分ができる
(エ) 納税者による税額の調整が難しく、法人からも確実に徴収できる

(ロジムオリジナル問題)

答え.(イ)(エ)

 (ア)(ウ)の選択肢は所得税のメリットです。所得税は個人の所得額によって決まるので、高所得者から多額の税を徴収することができ、富の再配分が可能です。所得税を上げすぎると富裕層が徴税を逃れようと海外へ出国してしまい、税収が少なくなる可能性もあります。

 一方、消費税は低所得者も高所得者も関係なく、全ての層から徴収することが出来ます(消費をしないで生きていくのは不可能に近いですからね)。

 法人に着目すると、法人税は利益(売上-経費)に対してかかりますが、消費税は売上に対してかかります。(消費者から税金を預かっている)

 税金を減らすために経費を増やして、利益を減らすことはできますが、税金を減らすために売上を減らすというのは現実的ではありません。

エルニーニョ現象

 これまた4月のニュースです。気象庁はこの夏は5年ぶりにエルニーニョ現象が発生する可能性が高いとの見通しを、エルニーニョ監視速報で発表しました。夏にエルニーニョ現象が発生すると、日本付近では太平洋高気圧の張り出しが弱くなり、梅雨明けが遅れたり、冷夏になる傾向があります

エルニーニョ現象とは太平洋の赤道中央から南米のペルー沿岸にかけて、海面の水温が平年より高くなる現象のことを指します。12月のクリスマス頃発生する現象のため、スペイン語で「イエス=キリスト」を意味する「エルニーニョ」の名前が付けられたそうです。

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続く現象です。 (気象庁 HPより)

一般的に、梅雨は発達した太平洋高気圧が日本列島に張り出し、梅雨の雨雲を押し出すことで終了します。しかし、エルニーニョ現象が起きると、ペール沖の方が暖かくなり本来フィリピン沖で発生していた低気圧が、より太平洋中央側で発生することになります。

このため、低気圧にともなってその北側で発生する高気圧も、太平洋中央部よりに発生し、日本の梅雨前線を押し出すまで発達するのに時間がかかります。 (エルニーニョ現象により梅雨開けが遅れる理由はまた別記事で詳しく解説します)

【実際の入試では?】

問.図3はエルニーニョ現象が発生している年の日本の天候の特ちょう・傾向をまとめたグラフです。図3から日本の「梅雨明けの時期」「夏季平均気温」「冬季平均気温」の傾向についての説明として、適するものを下のア~ケから3つ選び、記号で答えなさい。

J_el_6-7ake J_el_12-2T J_el_6-8T

ア.ほとんどの地方で梅雨明けが遅れる傾向があり、九州南部で高い割合になっている。しかし関東甲信や東北南部では、他の地方に比べてエルニーニョ現象の影響は小さい傾向がある。
イ.西日本では、冬よりも夏の平均気温にエルニーニョ現象の影響が大きく現れる傾向がある。
ウ.東日本、沖縄・奄美では、2回に1回の割合でエルニーニョ現象の時には冷夏になる傾向がある。
エ.沖縄・奄美を除いて冷夏になる傾向がある。
オ.北日本ではエルニーニョ現象の時には寒冬になる傾向が顕著である。
カ.エルニーニョ現象であっても東海と四国のみ梅雨明けの時期が遅くなる傾向がない。
キ.いずれの地方でも梅雨明けが早まる傾向がある。
ク.北日本の冬の平均気温の傾向はエルニーニョ現象だけでは判断できないが、東日本はエルニーニョ現象により暖冬となる可能性が高い。

ケ.エルニーニョ現象の発生は、日本の夏と冬の気温や梅雨明けの時期を決める決定的な要素となっている。

(本郷中 平成22)

答.ア・ウ・ク

 梅雨明けの時期は、関東甲信や東北南部は「早い」「遅い」の割合がそれほど大きくないが、それ以外の地方では遅れる傾向がある(50%)ので、ア,カ,キではアが正しい。また、夏期平均気温は、東日本、沖縄・奄美では低くなる割合が50%。つまり、2回に1回の割合で冷夏になる傾向があるので、ウ,エではウが正しい。

さらに、冬季平均気温も加えて調べると、東日本では冷夏・暖冬、西日本では暖冬になる傾向があり、北日本ではエルニーニョ現象の影響を受けにくいので、イ,オ、クではクが正しい。そして、これらのことから考えて、エルニーニョ現象の発生は、夏と冬の気温や梅雨明けの時期を決める決定的な要因となっているとはいえないので、ケは誤りである。

*2014年7月末時点で、オーストラリア気象局は2014年内のエルニーニョ現象の発生の可能性は低くなったと発表しています。

 

富岡製糸場世界文化遺産に登録

 2014年6月、群馬県富岡市にある富岡製糸場と絹産業遺産群が、世界文化遺産に登録されました。国内の世界文化遺産登録は富士山に続き、今回で14件目となります。

 富岡製糸場とは明治時代に設立された官営模範工場で、日本の蚕糸業の発展に大きな影響を与えました。文化的、学術的に価値がある工場や製鉄場などを特別に「産業遺産」と言い、富岡製糸場は日本初の産業遺産と言えます。また、明治初期の建造物にも関わらず現在まで保存状態がとても良く、その点でも非常に評価が高い遺産群です。

【実際の入試では?】

問.次の( )に当てはまる言葉を入れなさい。

外国人の指導により作られた官民工場(    )は、生産量、輸出量とも世界一になり、世界遺産の国内暫定リストにもあげられている。

(早稲田中 2013年)

答え.富岡製糸場

 富岡製糸場はフランス人技師、ブリュナの指導によって建設されました。製糸技術もフランスから学び、生糸は日本の重要な工業製品となりました。ちなみに富岡製糸場の見学は現在人気が殺到していて、群馬県の一大観光スポットとなっているようです。

その他

 2014年7月1日に安倍内閣は集団的自衛権に関する憲法解釈の変更を閣議決定しました。この件も「入試に出そうな」ビッグニュースではありますが、本文掲載時点ではまだまだ議論の最中であるため、稿を改めて解説します。

 2014年はこの他にもソチ五輪やワールドカップ、ウクライナ問題など時事ネタとなりそうなニュースがいっぱいです。日頃から新聞やテレビのニュースをチェックする癖をつけておきましょう。

(サムネイル画像のコモンズ表示”Chamber of the House of Representatives of Japan” by Kimtaro – http://www.flickr.com/photos/kimtaro/286649390/. Licensed under CC 表示 3.0 via ウィキメディア・コモンズ. )