保護者の方からの問い合わせだけでなく、メディアの方からもこのようなご質問を受けることが少なくありません。
皆さんがロジカルシンキングを理解し、上手に使っていく一助になれるように、定期的にこのテーマで解説や教室での具体例を寄稿していきたいと思います。
ロジカルシンキングは日本語では論理的思考と訳されています。書店には多くの解説本が並んでいますが、厳密な規則があるわけではありません。「論理」とは「思考の法則や形式」とされていますが、ルールブックが存在するわけではないので、色々な考え方が存在します。
私が子どもたちへの授業や社会人向けの研修で強調しているのは、ロジカルシンキングとは
- 本当にそう言えるのか?
- それだけか?
の2つの疑問を解消するための、「原因と結果を考える技術」だということです。
つまり「このように考えれば、疑問を持たれにくく、失敗もしにくい」というスキルです。
「新型コロナが流行しているのでマスクをすべき」という主張があります。
この主張に対して、私たちは
(1)本当にそうなのか?
「本当にマスクをすることは新型コロナの流行を防ぐのに有効なのか?」
(2)それだけか?
「コロナの流行を防ぐのにマスク以外にもっと良い方法はないのか?」
の2つの疑問を持つ可能性があります。
この疑問を持っている人は、「新型コロナが流行しているのでマスクをすべき」という主張を「論理的ではない」と感じます。ここでの「論理的ではない」は、「納得がいかない」とほぼ同義だといえます。
ここでロジカルシンキングとは、
(1)マスクが新型コロナの流行を防ぐのに有効だと納得してもらえる理由を考える
(2)マスクが他の方法よりも新型コロナの流行を防ぐのに有効だ
という理由を考える技術なのです。
100%誰もが理解できることはほとんどないのですが、様々な知見やデータ、経験をもとに「このように考えれば納得度が高まる可能性が高い」という実績を持った技術がロジカルシンキングとして紹介されています。
もちろんスタート地点は「必ず理由を述べましょう」というものなのですが、「理由は、相手の立場でも実感できるようにしましょう」などもロジカルシンキングの技術の1つです。
マスクをしている私は新型コロナにかかっていない
という理由よりも
マスクをしている人、していない人1000人ずつを調査した結果している方が明かにコロナにかかっていない
の方が相手が実感できる可能性が高いですね。
また、「それだけか?」という疑問に耐える理由を考える技術は、「考えモレを避けるためのチェックの仕方」とも言え、こちらも様々なものが存在しています。
「pros-cons」は常に「良い点と悪い点の両方を確認する」という技術ですし、3Cはビジネスにおいて「自社」だけでなく、「競合」と「顧客」も考えるのを忘れないようにしましょうという技術です。
これら「ロジカルシンキング」の技術は、自分の考えを他者に伝え、理解してもらうために重要なのはもちろんのこと、自分1人で物事を進めていく時にもミスや落とし穴を避けるために役立つので、様々な場面で大切です。
算数や数学のように厳密なルールだけが「論理的」なのではありません。100%ではないが、より分かりやすく、より確率が高くを実現するものだと言えるでしょう。
「他人に考えを説明する」とか「ビジネスで落とし穴を避ける」とか言うと、子どもたちとは関係のない話だと考える方もいらっしゃいますが、
━ 本当にそうか?
━ 他に選択肢はないか?
を考える力は、学力の根幹とも言えるものです。
次回からは、ロジカルシンキングと勉強のつながりについて紹介していきます。