私たちが「ロジカルシンキング」を子供向けに教えている理由

ロジカルシンキングとは、複雑な状況のなかで上手に考えて名探偵のように「切れ味鋭くズバッと答えを出す!」という印象をお持ちの方が多いようですが、実際は少し違います。
みなさんの普段の仕事のように「明確な正解がない状況」の中で、「少しでも良い結果」を探していくための羅針盤のようなものです。

なぜ私たちが「ロジカルシンキング」を子供向けに教えているのか。「ロジカルシンキング」がどのようなものなのかを、従来の学習と比較しながら簡単に紹介したいと思います。

学校での勉強と社会との大きな違いは「正解」の性質

学校ではすでに「正解」が確定しているものや、「正解」を出せる形に加工した問題に取り組みます。

たとえば、「この図形の面積は?」や、「鎌倉時代に民を救済するために出された借金帳消しの法令は?」といった問題です。小学校からこのタイプの問題を「正解」とセットで覚えこんできました。

先生たちの「良い指導」とは、このセットをいかにうまく覚えてもらえるかという点にありました。先人たちが試行錯誤の末に編み出した手法や、いろいろな失敗の末の成功事例がまとめられた形で勝ちパターンを「効率よく」教わっていたと言えるでしょう。

しかし、実際に社会に出ると「正解」はどこにも書いてありません。

  • 「あなたが今日訪れる顧客との契約をまとめるためにすべきことは何か?」
  • 「顧客が一番気にいる案は次のうちどれか?」
  • 「上司が許可する予算はいくらか?」
  • 「職場での評価が高くなるには何をすべきか?」

つねに皆さんが頭を悩ませているこれらの問題には模範解答などないのです。正解が含まれる選択肢が示されるわけでもないのです。

学校での問題演習と指導に慣れたこどもたち、大学生や若い社会人もこういった状況だと思考停止してしまうことが少なくありません。上司に対して「答えをしらないくせに、難題をふっかけてくるな」などストレスを感じることも多いのではないでしょうか。

ロジカルシンキングは、このような状況でもパニックにならずに「情報を正確に集めて、整理し、理解する」「仮説を立てる」「相手に伝える」「実行して結果を理解して、次に活かす」ことができるようになるための各種技術の総称です。

「そんな感じの状況にはまずはこんな風に対応する」というようなレベルからスタートすることで、「大きく外れてはいない」という手を打てるようにするものです。

私たちは、答えが明確な学校の問題で養った時間内で正確に問題を解く能力と、実際の社会で求められる試行錯誤し、関係者とコミュニケーションを取りながら仕事を進める力とのギャップを埋めたいという思いでロジカルシンキング教室を開講しています。

ロジカルシンキングは「柔らかい」スキル

みなさんの今までの「学び」の感覚からすると、「ロジカルシンキング」は、すこしあやふやな感じがするかと思います。

「こんな場合はこうする!」と明確に方法論があればよいのにと期待する方も多いでしょう。
しかし、それは逆に大きな的外れを生み出す可能性があります。ロジカルシンキングはもう少し「柔らかい」スキルなのです。そして上手な試行錯誤の能力は社会人のアウトプットの質の向上に「じわじわ」効いてくるものなのです。

  • 目の前の複雑な情報を扱いやすく分類・整理する
  • 数値化できるものを明確にして的確に判断する
  • 情報を正確に伝達する

もちろんロジカルシンキングだけですべての問題は解決しません。人間が絡む世界ですから、心理的・政治的な様々な問題も存在します。

しかし、ロジカルシンキングを学ぶことによって、それが使える場面を正確に把握できるようになります。
そうすることで、論理的に判断できる部分を増やし、それ以外の心理的・政治的な問題と区分して考えることができるようになります。

明確な模範解答がない世界では、自分の考えは常に

「それは本当か?」

「答えはそれだけか?」

という疑問の目に晒されます。自分自身でもそのような視点に立つと100%の自信は持てないでしょう。絶対的な模範解答ではなく、自分も含めた関係者が「とりあえずそのように仮定して進めても良いのではないか」という納得感を生み出すことがロジカルシンキングの目的なのです。

ロジカルシンキングの基本を身につけることによって、もやもやした景色がだいぶスッキリしてくることを目指しましょう。