「英語習得2000時間説」はホント？

　学生時代の英語学習時間はたった1000時間

日本人が英語を習得するまでに必要な時間は「2000時間」という話を耳にしたことはありませんか。言語学習には大変な時間を要することは明らかですが、なぜ2000時間なのでしょう。この説は一体どこからきたものなのでしょうか。

2000時間、と聞いてピンと来ないかもしれませんが、日本の学生が中学・高校・大学の合計10年間で英語を学習する時間は約1000時間と言われています。すると学生時代には、英語習得までに必要な時間のたった半分しか勉強していないことになりますね。「ああ、通りで。」と思われた方もいるかもしれませんね。

英語→日本語でも2000時間かかる

では実際2000時間という数字の謎に迫っていきましょう。ここでは二種類のアプローチからひも解いていきたいと思います。一つ目は1973年のアメリカ国防省の付属研究機関によるリサーチ結果を基にした計算方法です。母国語が英語であるアメリカの研修生を集めて様々な外国語を学習させ、それぞれの外国語習得にどれくらいの時間がかかるか調べる、という研究を行いました。

フランス語などの文法構造が英語に近い言語は、720時間の学習時間で日常生活レベルに達しました。一方、日本語をはじめとする英語とは全く異なる言語体系を持つ言語は、習得までになんと2400~2760時間かかるという結果に。

参考: http://myspoor.com/category11/entry25.html

外国語の習得の目安を「仕事でまあまあ使える」、つまりこの数値でいうと2と3間に到達するレベル、と定めるとおよそ2000時間かかります。英語話者が日本語を習得するのと、日本語話者が英語を習得するのは同程度の難しさだと考えられますので、英語を日本人が習得するのは2000時間要する、と言えるでしょう。ちなみに、日本語と文の構造が似ている言語として韓国語が挙げられます。手っ取り早くバイリンガルになりたい人は韓国語を勉強してみてはいかがでしょうか。

カナダのイマ－ジョンプログラム

二つ目の計算方法はカナダの「イマ－ジョンプログラム」を参考にしたものです。「イマ－ジョンプログラム」とは学校教育におけるすべての教科を外国語で勉強し、その言語を習得使用という教育方法です。カナダには公用語が英語とフランス語の２種類あります。「イマ－ジョンプログラム」において母国語がフランス語である学習者が英語を学ぶのにあたって、日常生活に差支えない程度までに2100時間かかるということが分かっています。先ほど述べた通り英語とフランス語は似た言語ですので、これを英語と日本語に置き換えると2100時間以上かかるが、まあ約2000時間と言っても不足はないだろう、とのことです。

「2000時間」説はウソ？

以上二つのアプローチを紹介してきましたが、これらの説はかなり無理があります。(うすうす感づかれた方も多いかと思います…。)

まず一つ目のアメリカの例ですが、この研修生というのはアメリカ全土でも優秀な研修生で、さらに彼らは1日6時間、連続週5日間のコースで集中的に外国語を学びました。日本人の学生にとって他の教科や習い事もある中でこれだけの膨大な時間を英語学習に充てることはとても難しいことです。さらに彼らのトレーニングはスピーキングに重点を置かれていて、一般的な日本の英語教育のような受動的な学習方法のまま同じ時間を稼いだとしても同じ結果には結びつかないことが予想されます。

次に二つ目のカナダの例も同様です。イマ－ジョンプログラムにおいてどっぷりと英語に漬かる学習を週5日毎日行い、またフランス語という英語に似ている言語を母国語とする子どもでさえ2100時間必要。ということは…と言うわけです。

外国語学習はそう甘くない

週1回45分のマンツーマン英会話、と週5回6時間の英語猛学習、で同じ2000時間を学んだとしても、同じ学習結果が出るとは考えにくいですね。と言うわけで、この「英語学習2000時間」説はどんな学習方法、学習環境でもあてはまるわけではなさそうです。もし周りで「通勤電車の中で毎日英語を聞き流して早5年だけども英語がペラペラになる気が全くしない。」と悩んでいる人がいたら、ぜひこの研究結果を教えてあげてください。付け加えると、もしネイティブとの45分間のマンツーマン英会話レッスンを週1回のペースで受けても、2000時間を超えるには61年もかかってしまいます。外国語習得というのはそう簡単に実現するものでは無いのです。